対象プログラム | 空力音響と海洋流体シミュレーション |
アプリケーション名 | PEQUOD/Cfoam-CABARET |
チューニング方法 | MPI_ALLTOALL集団通信の改善。MPI-IOによるI/O効率化 |
成果 | PEQUODは実行時間が2倍に高速化し、512コアで1638グリッド点までスケールした。Cfoam-CABARETでは膨大な数のファイルIOを削減した。 |
HECToR dCSE Teamの最適化によりCABARET手法による空力音響と海洋流体ソルバーの性能が改善
Phil Ridley, Numerical Algorithms Group Ltd (nAG)
Sergey Karabasov,Vasily Semiletov Queen Mary University of London(QMUL)
Pavel Berloff, Imperial College London(ICL)
James Maddison, University of Oxford
HECToR CSE Team, Numerical Algorithms Group Ltd (nAG)
英国学術スーパーコンピューティング設備であるHECToR 向けの計算科学技術(CSE)サポートサービス業務を行うnAGのHPC専門家により,CABARET手法を用いた2つの計算流体力学(CFD)アプリケーションの性能が改善されました。
CABARET (Compact Accurate Boundary Adjusting high REsolution Technique) は、英機体や機体の複雑な流体を解くのに用いられる一般用途向けの数値スキームであり、計算空力音響力学や地球物理の問題に適しています。CABARETのアプリケーションの一つとして、現在環境問題として重要となっている航空機騒音の研究が有ります。航空機騒音の重要な原因は、機体、エンジン、翼フラップ周りの空気の流れから生じます。この騒音を下げるためには、翼フラップ、噴流、フラップ・ジェット相互作用の正確な模擬が要求されるため、極めて困難な問題です。もう一つのアプリケーションは、気候変動研究の主要な関心である海洋における中規模から大規模な渦の還流効果を模擬するものです。
dCSE プロジェクトの成功について,QMUL、School of Engineering and Material ScienceのSergey Karabasov博士は次のように述べています。「dCSEプロジェクトの75%はCABARET手法をより広い科学アプリケーションへ拡張することに費やされました。特に、新たに計算地球物理流体力学コードPEQUOD(Parallel Quasi-Geostrophic Model)をHPC向けに導入して、渦解像領域での高解像度海洋モデリングシミュレーションを可能にできたことを感謝します。本作業により、NERC予算の3年プロジェクトである"乱流振動"(Berloff博士(PI)、Karabasov博士(Co-I)を立上げ、PEQUODコードを海洋流の長期変動研究に用いる事となりました。」
「残りの25%は、空力音響アプリケーションでの非構造CABARETコードのI/O改善を行いました。この作業が重要なのは、元のCABARETアプリケーションのポスト処理が長いシリアル処理であり、HPCファイルシステムで問題となりつつあったためです。dSCEサポートはコード開発にとても役立ちました。」
HECToR HECToR はResearch Councils を代行する EPSRC により管理されており、英国学術界の科学と工学をサポートする任務を負っています。エジンバラ大学にある Cray XT スーパーコンピュータはUoE HPCx 社によって管理されています。 CSE サポートサービスはnAG 社によって提供されており、高度なスーパーコンピュータの効率的な活用のために、ユーザは確実に適切なHPC専門家にコンタクトできます。CSEサポートサービスの重要な特徴は分散型CSE(dCSE)プログラムです。これは簡潔なピアレビューを経てユーザからの提案に応える、特定のコードのパフォーマンスとスケーラビリティに対処するプロジェクトです。dCSE プログラムは、伝統的なHPCユーザアプリケーションサポートとnAG によるトレーニングで補われる、約 50 の集中的プロジェクトから成り立っています。 これまでに完了した dCSE プロジェクトは、CSEの尽力により可能なコスト削減と新しい科学の優れた適用例をもたらしました。ここで報告されているCABARETプロジェクトは成功を収めたパフォーマンス改善であり、新たなサクセスストーリーとなっています。 |
プロジェクトの背景
このdCSEプロジェクトの目的の一つは、CABARETアプリケーションの一つであるParallel Quasi-Geostrophic Model(PEQUOD)のスケーラビリティーを改善することです。このアプリケーションは、海洋における還流渦のような海洋学上の遷移現象モデリングに用いられます。もう一つの目的は、航空機ジェットエンジンとフラップの相互作用が生じる騒音モデリングに用いられるCfoam-CABARETのI/O効率を改善することです。
QMUL、School of Engineering and Material ScienceのSergey Karabasov博士はこのプロジェクトの主任調査員で、副調査員はICL、Department of MathematicsのPavel Berloff博士でした。nAG のPhil Ridley はnAG CSE チームと協力して6人月でプロジェクトを遂行しました。
プロジェクトの結果
PEQUODの改善により、代表的なグリッドサイズ1025点で2倍の速度向上を達成し、更にHECToRフェーズ3の512コアを用いて16385グリッド点まで良好なスケーラビリティを示しました。Cfoam-CABARETのI/O改善では、チェックポイント/リスタートおよび可視化ファイル生成にMPIを用い、実行時に必要だった数千ファイルを取り除いたことにより、HECToR上でのより実際的な利用を可能にしました。
詳細なテクニカルレポートは以下で参照いただけます。
http://www.hector.ac.uk/cse/distributedcse/reports/
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