nAG の乱数生成器

テクニカルレポート

nAG数値計算ライブラリでは、現在以下の6種類の乱数生成器が提供されています。

  • nAG 基本生成器(線形合同法による乱数生成器)
  • Wichmann-Hill Ⅰ 生成器(4つの線形合同法を組み合わせた乱数生成器)
  • Wichmann-Hill Ⅱ 生成器(4つの線形合同法を組み合わせた乱数生成器,大きな入力引数に対応)
  • Mersenne Twister 生成器(Twisted Generalized Feedback Shift Register乱数生成器)
  • L’Ecuyer MRG32k3a 生成器(二つの多重再帰生成器を組み合わせた乱数生成器)
  • ACORN生成器(特殊な多重再帰生成器)

これらの乱数生成器は,C/C++/Fortran/Java等様々な環境で使用することができます。また,並列環境やXeon Phi™ コプロセッサを用いた環境でも使用することができます。

nAGの提供している乱数生成法は,様々なアプリケーションでの実利用において十分な質と性能を発揮します。 またルーチンのインターフェース(仕様)は今後別のタイプの生成器を追加することのできる柔軟性の高いものとなっています。

乱数生成の分野は発展スピードが速くこれまでに様々な乱数生成法が提案されてきていますが,どの乱数生成器を使用するかは以下に示すいくつかのポイントで判断することができます。

  • どれだけ簡単に実装できるか
  • 周期(長いほど良い)
  • 乱数生成器の統計的性質
  • 乱数生成速度
  • どれだけ簡単に並列化できるか

これらの点について,nAGの各生成器がどのような特徴をもっているか,その長所と短所をまとめた表を以下に示します。
なおnAG製品をご利用いただく場合は,「実装」及び「並列化」の2点については(nAG にて既に行われているため)ユーザの皆様は気になさる必要がございません。

乱数生成器 長所 短所
nAG 基本生成器 線形合同法の乱数生成器のため乱数生成の数式を理解しやすい。
Wichmann-Hill Ⅰ 生成器よりも乱数生成速度がやや速く,周期もやや長い。
Diehard テストをクリアしたがTestU01のBig Crush テストをクリアしていない。
最近の生成器よりも周期が短い。
統計的な性質が悪くなりやすい。
良質な線形合同法の生成器ではあるが、もはや最前線ではない。
Wichmann-Hill Ⅰ 生成器 273個の独立した乱数生成器で構成されているため独立した乱数ストリームを生成できる。
良質な生成器である。
最近の生成器よりも周期が短い。
統計的な性質が悪くなりやすい。
Wichmann-Hill Ⅱ 生成器 MRG32k3aと比較してskip-aheadが速く簡単に行える。
シードの設定が容易である。
良質の万能な生成器である。
TestU01のBig Crushテストをクリア。
特になし。
Mersenne Twister 生成器 周期が長い。
乱数生成速度が速い。
TestU01のBig Crushテストをクリア。
シードの設定が困難である。
並列化が難しい。
L’Ecuyer MRG32k3a 生成器 乱数生成速度が速い。
並列化が容易である。(特にGPU環境で)
良質の万能な生成器である。
TestU01のBig Crushテストをクリア。
特になし。
ACORN 生成器 入力引数の与え方によっては長い周期が実現可能である。
統計的な性質が良い。
TestU01のBig Crushテストをクリア。
nAGの他の生成器と比べて処理速度が遅い。
※)
乱数生成器の性質をテストするためのいくつかのテストスイートが提案されていますが,このうちで最初に世の中に広く受け入れられたものにDiehard という一連のテストがあります。また最近ではTestU01という一連のテストが広く受け入れられています。このTestU01にはSmall Crush と呼ばれる主要なテストのみ含んだ一連のテストとBig Crushと呼ばれるTestU01の全てのテストを含んでいる一連のテストがあります。

nAG数値計算ライブラリの乱数生成器の詳細については Chapter G05を参照下さい。

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