Keyword: 物流, 最適化, 在庫管理, ナップサック問題, MILP
物流業界における最適化問題:予算制約下の仕入れ最適化問題(利益最大化)
問題の概要
物流業界では、限られた予算内で最大の利益を得るために、適切な商品の仕入れ量を決定することが重要です。この問題は、ナップサック問題の一種であり、各商品の仕入れ価格と利益が与えられたとき、予算の制約の下で総利益を最大化するような商品の組み合わせと数量を求めることを目的としています。
この問題を解決することで、効率的な在庫管理と利益の最大化が可能となります。主要な制約条件は予算であり、目標は総利益の最大化です。
予算制約下の仕入れ最適化問題(具体例)
ある物流企業の在庫管理者が、予算10万円で以下の製品から最大の利益を得られるように仕入れを行いたいと考えています。各製品の仕入れ価格と利益は以下の通りです。最大の利益を得るために、どの製品を何個仕入れるべきか決定してください。
製品 | 仕入れ価格(円) | 利益(円) |
---|---|---|
A | 1,000 | 700 |
B | 6,000 | 5,000 |
C | 11,000 | 9,000 |
D | 15,000 | 13,000 |
この問題を解くことで、限られた予算内で最適な仕入れ計画を立てることができ、在庫管理の効率化と利益の最大化が実現できます。
問題の定式化
パラメータ
パラメータ | 説明 | 値 |
---|---|---|
製品の種類数 | 4 | |
製品 |
||
製品 |
||
予算 | 100000 円 |
決定変数
変数 | 説明 | 範囲 |
---|---|---|
製品 |
目的関数
目的 | 式 |
---|---|
利益最大化 |
総利益を最大化することで、限られた予算内で最適な仕入れ計画を立てることができます。
制約条件
制約 | 式 | 説明 |
---|---|---|
予算制約 | 仕入れる製品の合計金額が予算以下でなければならない | |
非負制約 | 仕入れ数量は非負でなければならない | |
整数制約 | 仕入れ数量は整数でなければならない |
コード例
以下に、この最適化問題を nAG Library for Python の MILP 問題専用ソルバー関数 handle_solve_milp を用いて解くコード例を示します。
今回の問題は変数と制約条件の数が比較的少なく、整数制約を含む混合整数線形計画問題であるため、汎用的な MILP ソルバーであるhandle_solve_milp を選択しました。
import numpy as np
from naginterfaces.library import opt
from naginterfaces.library import mip
# 製品の種類とそれぞれの仕入れ価格および利益
= ['A', 'B', 'C', 'D']
products = np.array([1000, 6000, 11000, 15000]) # 仕入れ価格(円)
purchase_prices = np.array([700, 5000, 9000, 13000]) # 利益(円)
profits = 100000 # 予算(円)
total_budget
# 製品の種類数
= len(products)
product_count
# 最適化問題のハンドルを初期化
= opt.handle_init(product_count)
handle
# 目的関数を設定(利益の最大化)
opt.handle_set_linobj(handle, profits)
# 各製品について予算内で購入可能な最大数を計算
= np.floor(total_budget / purchase_prices)
max_purchases
# 変数の上限と下限を設定
opt.handle_set_simplebounds(handle, np.zeros(product_count), max_purchases)
# 予算制約を設定
=[-np.inf], bu=[total_budget], irowb=[1] * product_count, icolb=list(range(1, product_count + 1)), b=purchase_prices, idlc=0)
opt.handle_set_linconstr(handle, bl
# 各変数を整数として扱う設定
= np.array([i for i in range(1, product_count + 1)])
variable_indices 'INTEGER', variable_indices)
opt.handle_set_property(handle,
# ソルバーのオプションを指定
'Print Level = 0')
opt.handle_opt_set(handle, 'Task = Maximize') # 最大化問題
opt.handle_opt_set(handle,
# 問題を解く
= mip.handle_solve_milp(handle)[0]
purchase_quantities
# 結果の表示
= np.dot(purchase_prices, purchase_quantities) # 総仕入れ額を計算
total_spent print("最適解と仕入れ額:")
for i in range(product_count):
print(f"{products[i]}: {round(purchase_quantities[i])} 個, 仕入れ額: {round(purchase_quantities[i] * purchase_prices[i])}円")
print(f"---------------------------\n総利益: {round(np.dot(profits, purchase_quantities))} 円")
print(f"総仕入れ額: {int(total_spent)} 円")
# ハンドルの削除
opt.handle_free(handle)
結果例
上記のコードを実行すると、以下のような出力が得られます。
最適解と仕入れ額:
A: 4 個, 仕入れ額: 4000円
B: 1 個, 仕入れ額: 6000円
C: 0 個, 仕入れ額: 0円
D: 6 個, 仕入れ額: 90000円
---------------------------
総利益: 85800 円
総仕入れ額: 100000 円
この結果から、予算100,000円の制約の下で、製品Aを4個、製品Bを1個、製品Dを6個仕入れることが利益を最大化する最適解であることが分かります。製品Cは仕入れられません。この組み合わせにより、総仕入れ額は100,000円となり、利用可能な予算を全て使用します。そして、この仕入れ方によって得られる総利益は85,800円となります。
まとめ
この問題では、混合整数線形計画法を用いて、物流業界における予算制約下での利益最大化問題を解決しました。nAG Libraryの MILP ソルバーを利用することで、効率的に最適解を求めることができました。
この手法は、予算制約下での資源配分問題に広く応用できます。例えば、在庫の保管スペースや販売期間など、追加の制約条件を導入することで、より現実的な状況を考慮した問題に拡張することができます。また、複数の目的関数を設定し、利益最大化と在庫切れ率の最小化のようなトレードオフ関係にある目標のバランスを取るような応用も可能です。