業界別最適化Example集: 農作物の作付け計画の最適化 (農業)
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Keyword: 農業, 最適化, 作物計画, 土地利用, 利益最大化, LP

農業分野の最適化問題:農作物の作付け計画の最適化

問題の概要

farming

農業経営において、限られた農地をどのように活用し、収益性を最大化するかは重要な意思決定です。この問題では、与えられた農地で栽培する作物の割合を最適化することで、農家の利益を最大化することを目的とします。主な制約条件としては、農地の面積、作物ごとの資源要求量、市場の需要などが挙げられます。

農作物の作付け計画の最適化問題(具体例)

農家は10ヘクタールの農地でトウモロコシ、大豆、小麦の3種類の作物を栽培しようとしています。各作物には、単位面積あたりの利益、水と肥料の要求量、市場の需要が設定されています。農家の利用可能な水量は40,000m³、肥料量は2,500kgです。これらの制約条件の下で、農家の利益を最大化する最適な作物の作付け面積を決定することが目的です。

以下の表に各作物の詳細を示します:

作物 単収(トン/ha) 単位面積あたりの利益(円/ha) 単位面積あたりの水要求量(m³/ha) 単位面積あたりの肥料要求量(kg/ha) 市場の需要(トン)
トウモロコシ 8 200,000 5,000 300 32
大豆 3 150,000 3,000 200 9
小麦 5 100,000 2,000 250 25

問題の定式化

パラメータ

パラメータ 説明
A 農地の総面積(ha) 10
W 利用可能な水の総量(m³) 40,000
F 利用可能な肥料の総量(kg) 2,500
pi 作物 i の単位面積あたりの利益(円/ha) p1=200,000, p2=150,000, p3=100,000
wi 作物 i の単位面積あたりの水要求量(m³/ha) w1=5,000, w2=3,000, w3=2,000
fi 作物 i の単位面積あたりの肥料要求量(kg/ha) f1=300, f2=200, f3=250
yi 作物 i の単収(トン/ha) y1=8, y2=3, y3=5
di 作物 i の市場需要量(トン) d1=32, d2=9, d3=25

決定変数

変数 説明 範囲
xi 作物 i の栽培面積(ha) 0xiA,i{1,2,3}

目的関数

目的
利益の最大化 maxi=13pixi

農家の利益を最大化するために、各作物の栽培面積に単位面積あたりの利益を乗じた合計を最大化します。

制約条件

制約 説明
農地面積の制約 i=13xiA 栽培面積の合計は農地の総面積以下でなければならない
水の利用量制約 i=13wixiW 水の利用量は利用可能な水の総量以下でなければならない
肥料の利用量制約 i=13fixiF 肥料の利用量は利用可能な肥料の総量以下でなければならない
市場需要量の制約 yixidi,i{1,2,3} 各作物の生産量は市場の需要量を満たさなければならない

これらの制約条件を満たしつつ、同時に市場の需要を満たすことが求められます。

コード例

以下に、この線形計画問題を nAG Library for Python の LP 問題専用ソルバー関数 lp_solve を用いて解くコード例を示します。

今回の問題は変数と制約条件の数が比較的少なく、小規模な線形計画問題であるため、lp_solve のような汎用的な LP ソルバーである lp_solve を選択しました。

import numpy as np
from naginterfaces.library import opt

# パラメータ設定
A = 10  # 農地の総面積(ha)
W = 40000  # 利用可能な水の総量(m³)
F = 2500  # 利用可能な肥料の総量(kg)
p = np.array([200000, 150000, 100000])  # 単位面積あたりの利益(円/ha)
w = np.array([5000, 3000, 2000])  # 単位面積あたりの水要求量(m³/ha)
f = np.array([300, 200, 250])  # 単位面積あたりの肥料要求量(kg/ha)
y = np.array([8, 3, 5])  # 単収(トン/ha)
d = np.array([32, 9, 25])  # 市場の需要(トン)

# 市場の需要に基づく各作物の最大栽培面積 (ha)
max_corn = d[0] / y[0]  # トウモロコシ
max_soy = d[1] / y[1]    # 大豆
max_wheat = d[2] / y[2] # 小麦

# 変数と制約の上下限
bl = [0, 0, 0, 0, 0, 0]  # 各作物の栽培面積の下限と各制約の下限
bu = [min(max_corn, A), min(max_soy, A), min(max_wheat, A), A, W, F]  # 上限

# 初期解の推定
x = [3, 3, 3]  # 初期栽培面積

# コミュニケーションオブジェクトの初期化 ('lp_solve'関数用)
comm = opt.nlp1_init('lp_solve')

# 目的関数の係数(負の符号は最大化問題のため)
cvec = -p

# 制約係数行列
a = np.array([
    [1, 1, 1],  # 合計栽培面積制約
    w,          # 水の利用量制約
    f           # 肥料の利用量制約
])

# 線形プログラミング問題を解く
_, x, _, obj, _, _ = opt.lp_solve(bl, bu, x, comm, a=a, cvec=cvec)

# 結果の表示
print(f"トウモロコシの栽培面積: {x[0]:.2f} ha")
print(f"大豆の栽培面積: {x[1]:.2f} ha")
print(f"小麦の栽培面積: {x[2]:.2f} ha")
print("目的関数値(総利益):", f"{-int(obj):,}", "円")

# リソースの使用量
total_water_used = np.dot(w, x)
total_fertilizer_used = np.dot(f, x)

print("使用された水の総量:", f"{total_water_used:,}", "m³")
print("使用された肥料の総量:", f"{total_fertilizer_used:,}", "kg")

# 作物ごとの収益
profit_corn = p[0] * x[0]
profit_soy = p[1] * x[1]
profit_wheat = p[2] * x[2]

print("作物ごとの収益:")
print(f"トウモロコシ: {int(profit_corn):,} 円")
print(f"大豆: {int(profit_soy):,} 円")
print(f"小麦: {int(profit_wheat):,} 円")

結果例

上記のコードを実行すると、以下のような結果が得られます:

トウモロコシの栽培面積: 4.00 ha
大豆の栽培面積: 3.00 ha
小麦の栽培面積: 2.80 ha
目的関数値(総利益): 1,530,000 円
使用された水の総量: 34,600.0 m³
使用された肥料の総量: 2,500.0 kg
作物ごとの収益:
トウモロコシ: 800,000 円
大豆: 450,000 円
小麦: 280,000 円

この結果から、利益を最大化するためには、トウモロコシを4ha、大豆を3ha、小麦を2.8ha栽培するのが最適であることがわかります。この最適な作付け計画を実行することで、農家は153万円の最大利益を得ることができます。

また、水と肥料の使用量がそれぞれ34,600m³と2,500kgであることから、与えられた資源の制約内で最適化が行われていることが確認できます。作物ごとの収益の内訳を見ると、トウモロコシが最も高い収益をあげており、次いで大豆、小麦の順となっています。

これらの結果は、限られた農地と資源を最大限に活用し、収益性を向上させるための意思決定に役立ちます。農家は、この最適な作付け計画を参考に、実際の栽培計画を立てることができます。

まとめ

ここでは、線形計画法を用いて、限られた農地と資源の制約条件下で農家の利益を最大化する作物の作付け計画を求めました。労働力や輪作などの要因を考慮すれば、より現実的で総合的な農業経営の最適化にも応用できます。

さらに、この最適化アプローチは、農業分野だけでなく、資源の制約下で利益最大化を目指す他の産業にも適用可能です。


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