その他のアプローチ

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その他のアプローチ

ソフトウェアが解の精度や問題の鋭敏さに関して適切な推定量を提示してこないときにはどうしたら良いだろうか。一つのアプローチは多少摂動を加えたデータに対し問題を実行し、解を比較してみることである。もちろんこの場合の難点はどのように摂動を加えるのがベストかをどのように知るかという点にある。仮に小さな摂動が解を大きく変化させるとするなら、問題が鋭敏であることは確かであるが、逆は言えない。ソフトウェアが安定な手法を実装していると信頼できる場合には、解における鋭敏さは問題に起因すると言えるが、そうではない場合には手法と問題のどちらが鋭敏であるかを確かめる手立てはない。

そのような鋭敏さの推定を助けるべく、確率的手法によって後退誤差や鋭敏さに関する統計的推定値を求めるソフトウェアが開発されている。その一例が Chaitin-Chatelin and Frayssé [1996, Chapter 8] に記載されているPRECISEで、統計的後退誤差解析用モジュールの他、感度解析用のモジュールも提供する。もう一つの例がCADNA(Note1)であるが、その用例については Vignes [1993] を参照されたい。

解に関する不等式を得る別のアプローチは、区間分析(interval analysis)と組み合わせる形で区間演算(interval arithmetic)を使用する方法である [Moore, 1979; Kreinovich; Alefeld and Mayer, 2000]。ある種の問題は区間演算を用いてうまく解決できるが、別の問題に対しては得られた範囲値が余りに悲観的に過ぎるといったことが起り得る。しかし区間演算は現実的な範囲値を得るための事後(posteriori)ツールとしてしばしば用いられる。Matlab用の区間演算ツールボックスINTLAB(Rump [1999])が無償で提供されている。 (Note2)
また Hargreaves [2002] についても参照されたい。ただし一般的に言うなら、区間演算の目的とするところは解に対する前進誤差の範囲値を算出することにある。

Example 8.1 (桁落ちと区間演算)

非常に簡単な例としてExample 3.1における$s$の計算を4桁の区間演算で行ってみる。区間演算は厳密解を含むことが保証された区間を操作対象にするという点に留意するなら、MATH が導かれる。結果は若干悲観的ではあるが、桁落ちに対する適切な警告を発している。MATH

問題の鋭敏さと解の精度の推定を可能にする機能をサポートするようソフトウェア開発者に対し圧力をかけることを遠慮すべきではないと最後にコメントしておく。



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