nAGお客様事例

Rothamsted Research 様

お客様事例
業種 リサーチ機関
ソリューション 環境データ変動の分析
使用された製品 nAG C ライブラリ
使用された関数 チャプターG05(疑似乱数生成器とLU分解アルゴリズム)、チャプターG02(相関と回帰分析)
[2013年2月掲載]

nAGライブラリを使用した環境データ変動の分析

Alice Milne1 & Murray Lark2

1 Rothamsted Rothamsted Research, Harpenden, Hertfordshire AL5 2JQ, UK
2 British Geological Survey, Keyworth, Nottingham NG12 5GG

私たちを取り巻く世界を理解するために、科学者は環境に関する多くの特性を測定します。彼らの目的は資源を数値化すること、あるいは空間や時間と共にどのように変化するかを評価することです。例えば、土壌科学者は土壌の粘土含有量が地形とともにどのように変化するかについて興味をもつかもしれません。また水文学者は川の硝酸塩濃度が時間とともにどのように変化するか知りたいかもしれません。簡単に言うと、分散統計はこれを定量化します。1つの変数が他の変数の変化に対してどのように反応するかを知る手掛かりとなり得るので、科学者は2変数間の相関によく興味を持ちます。

一般的に分散と相関は共に、測定の尺度とそれらが生じた場所によって変わることを予測する必要があります。なぜならば、これらは異なる尺度で任意の変数に影響を与える様々なプロセスである可能性があるからです。そしてこれらのプロセスは空間あるいは時間と共に変化する可能性があります。離散ウェーブレット変換(DWT)と最大重複 DWT(MODWT)は、任意の間隔と位置に従って一連の規模で分散(及び相関)を分割するのに利用可能な信号処理法です(Percival and Walden, 2000を参照)。このような分析は興味のある変数に影響を与えるプロセスを理解するのに役立ちます。

私たちはウェーブレット係数を計算するために、そしてこれらからウェーブレット分散とウェーブレット相関をいくつかの尺度で推定するためにプログラムを書きました。私たちはこれらの推定値の信頼区間を計算したいと思い、nAG(ニューメリカルアルゴリズムズグループ、www.nag.com )ライブラリのチャプター G01 のカイ二乗ルーチンを使用しました。プログラムは一連のデータに渡るウェーブレット分散とウェーブレット相関の著しい変化を探します。それらが同じ自動共分散構造をもつ定常時系列データからの予想より大きい場合に変化は著しいとみなされます。この分析は任意の共分散構造をもつ模擬データを生成するために nAG ライブラリのチャプターG05の疑似乱数生成器の乱数生成器アルゴリズムとLU分解アルゴリズムを使用しています。また相関行列と共分散行列を計算するのに相関と回帰分析のチャプター(G02)の nAG ルーチンと時系列分析のチャプター(G13)のルーチンを使用しています。私たちは nAG ライブラリの関数が使いやすく、信頼性があり効率的であることがわかりました。

私たちのプログラムはいくつかのアプリケーションのデータを分析するのに使用されました。これには土壌特性が農地からの亜酸化窒素排出にどのように影響を与えるかについての調査が含まれています。亜酸化窒素は最も強力な温室効果ガスの一つで、土壌特性が異なる空間規模でどのように排出に影響を与えるか理解したいと思いました。ベッドフォードシャー(Bedfordshire)州で 7 km のトランセクトに沿って256か所で土壌コアを採取しました。亜酸化窒素の排出と土壌の硝酸塩と水の含有量(いくつかの変数の中で)を計測しました。各変数に対するウェーブレット分散と亜酸化窒素排出と他の土壌特性との間のウェーブレット相関を計算するのに私たちのプログラムを使用しました。ランドスケープ全域で土壌特性と排出比の間の相関の空間的均一性を検討しました。この分析により複雑なパターンの規模依存性が明らかになりました。排出比とランドスケープスケールでしか見られない充水間隙(water-filled pore space)の関数の間には顕著な相関がありました。排出比は中間スケールと最も粗いスケールで土壌の硝酸塩含有量と強い相関性があります。ウェーブレット分析はこれらの相関が空間的に一様ではないことを示しています。Lower Greensand の土壌に主に該当するトレンセクトの北部では、最も高いランドスケープスケールにおいて硝酸塩濃度と排出比との間の相関性は大きくありませんでした。しかしこれらの変数は他の土壌母材ではこのスケールにおいて顕著に相関性がありました。ランドスケープスケールでは硝酸塩含有量と充水間隙は、亜酸化窒素排出を予測するための極めて重要な土壌特性であることがわかりました。従ってこれらはプロセスモデルとインベントリ用の排出係数に取り込まれる必要があります( Milne et al., 2011を参照)。

figure1

(図1:Bedfordshire の Silsoe の野原から土壌サンプルを採取している
Murray Lark と Ruth Skilton )

参考文献

Numerical Algorithms Group (www.nag.com), nAG Library Manual, Oxford.
Milne, A.E., Haskard, K.A., Webster, C.P., Truan, I.A., Goulding, K.W.T. & Lark, R.M. Wavelet analysis of the correlations between soil properties and potential nitrous oxide emission at farm and landscape scales, European Journal of Soil Science, 62, 467-478.
Percival, D.B. & Walden, A.T. 2000. Wavelet Methods for Time Series Analysis. Cambridge University Press, Cambridge, UK.

謝辞

この作業は、Biotechnology and Biological Sciences Research Council (BBSRC) によって資金援助されているRothamsted Research のComputational and Mathematical Biologyのプログラムのもとで行われました。

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