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NAG ライブラリを利用して
Excelで金融オプション価格を計算する

Marcin Krzysztofik* and Jeremy Walton
The Numerical Algorithms Group Ltd.

目次

1  概要

2  オプションとオプションプライシング

2.1  オプションの概要

2.2  オプションの価格決定

3  グリークス(Greeks)

3.1  Delta(デルタ)

3.2  Vega(ベガ)

3.3  Theta(セータ)

3.4  Rho(ロー)

3.5  Crho

3.6  Gamma(ガンマ)

3.7  Vanna

3.8  Charm

3.9  Speed(スピード)

3.10  Colour(カラー)

3.11  Zomma

3.12  Vomma

4  ブラック-ショールズモデル

5  NAG ライブラリオプションプライシングルーチン

5.1  例1

5.2  例2

5.3  可用性

6  結論と今後の研究

謝辞

1  概要

この資料では金融オプションの価格を計算するためのNAGライブラリ [18] のアルゴリズムの使用について記述しています。具体的には、Microsoft Excel スプレッドシート内からNAG ルーチンを呼び出す方法についていくつかの例を用いて説明しています。
この文書は次のように構成されています。次のセクションではオプション(§ 2.1)とオプション価格(§ 2.2)に関して開発された様々なモデルについての簡単な概要を示しています。様々な従属パラメータに対する価格の感応度も興味深いものがあります;この情報は価格の偏導関数に含まれており、これはグリークス(§ 3を参照)として知られています。セクション4では、価格とグリークスの閉形式表現に加えて、オプションプライシングモデルの中の一つの例を表しています。 このモデルによる結果の計算(及び他の多くのモデルの計算)はNAGライブラリルーチン (§ 5) を用いて行うことができます;私たちは、2つの例のうちExcel (§ 5.1)からNAG ルーチンを呼び出している最初の例によりこれを詳しく記述しています。次に、オプション価格の動きに関する決定や分析における今後の可能性をより複雑な例(§ 5.2)を用いて説明しています。例えば、Excel 内での計算結果の視覚化です。最後に、興味をお持ちの読者の方々が、これらの例をどのように参照できるか記述しています(§ 5.3)。そして今後の研究についての見解で締めくくっています(§ 6)。

2  オプションとオプションプライシング

2.1  オプションの概要

オプションとは、資産を特定の期間の終わりや期間中に約定価格(行使価格と呼ばれる)で買ったり売ったりする権利(義務ではありません)を買い手に与える、2つのグループ(買い手や売り手と呼ばれる)間の契約です。オプションは金融商品であり、デリバティブの一つです。デリバティブとは、その価値が何かほかのものに基づいているものです。この場合は資産(オプションの基礎となると言われている)1です。行使価格は買い手と売り手がオプションを締結するときに指定されます;特定の期間の終わり(オプションが満期になると言われる場合)を示す期日は満期日と呼ばれます。買い手が資産を購入できるオプションはコールオプションで、一方プットオプションは買い手が資産を売却することができます。
もし買い手がオプションを行使することを選択する場合、売り手は行使価格で資産を売るかもしくは買わなければなりません;そうでないと、オプションは期限切れとなってしまいます。オプションの種類により、いつ、どのように、どんな状況で買い手が行使できるかが決まります[11]。 例えば、ヨーロピアンオプションは満期日にのみ行使されます。一方アメリカンオプションは満期前ならいつでも行使できます。買い手は資産の行使価格と現在価値(しばしば現物価格と呼ばれる)との差に関連する利益に基づいてオプションを行使するかどうか決めます。
ヨーロピアンオプションとアメリカンオプションは比較的単純な利益モデルのため(以下の§ 4を参照)たびたびバニラと言われています。また、より複雑な計算を必要とする様々なエキゾチックオプションがあります。例えば、アジアンオプションにはあらかじめ決められた期間での原資産の平均価格に依存する利益があります。バリアオプションでは原資産の価格が特定の値(あるいはバリア)を超えるまでは行使することができません。

2.2  オプションの価格決定

オプションは金融市場で広く取引されており、任意のオプションの値(価格)を決定するいくつかの手法が必要とされます。しかしながら、これは一般には簡単なことではありません。その理由として、このような手法が原資産の値に加え、無リスク利子率、資産ボラティリティ、行使価格、満期日等のいくつかの変数に依存するからです。さらに、オプション価格の決定には資産価格が時間とともに変動するかたちのモデルの構築が必要です。このプロセスは基本的にランダムウォークです。いくつかの定量的技術−通常確率解析学に基づく−がこれらのモデル用に開発されました。解析解、有限差分と有限要素の手法、モンテカルロシミュレーションを含む様々な数学的手法を用いて実装されます。この資料は、これらのモデルの最初のモデルのみ考慮しています。しかし、私たちはセクション6で他の実装モデルのいくつかを使用する今後の研究についても簡単に述べています。
最も知られているモデルの一つにブラック−ショールズ[3]のモデルがあります。これは、ヨーロピアンプットオプションとコールオプション(以下の§ 4を参照)の値を示す閉形式を表すために分析的に解くことができる、偏微分方程式 (PDE) を導きます。しかしこれは様々なオプションプライシングモデル[9]のうちの一つにすぎません、それぞれが資産価格の動きについて異なる仮定を行います。これらのモデルの多くは解析解をもち、NAGライブラリルーチンを利用して評価可能です;これについての詳細は§ 5で述べています。

3  グリークス(Greeks)

オプション価格の動きを推定するほかに、トレーダーは従属パラメータ(例えば、資産価格)の変化への感応度に興味を持ちます。これらの感応度は正式には導関数として表されます。なぜならば、それらはしばしばギリシャ文字(通常グリークスと呼ばれます)によって表されるからです。
グリークスはリスクの定量化に役立つためトレーダーによって使用されます。たとえば、Delta(方程式(1)を参照)はいわゆるデルタヘッジに採用されています。デルタヘッジはリスク削除の戦略で、原資産の売り持ち(ショートポジション2)を取ることとオプションの買い持ち(ロングポジション3)で相殺することを含んでおり、その逆もあります(資産の買いとオプションの売り)。

3.1  Delta(デルタ)

Delta (Δ) はオプション価格Pの原資産価格Sの変動に対する感応度です。

formula1

3.2  Vega(ベガ)

Vega (ν) は原資産ボラティリティ、 σ に関するオプション価格の変動率を測ります。

formula2

3.3  Theta(セータ)

Theta (Θ) はオプション、T の権利行使残存期間の変動に対するオプション価格の感応度です。残存期間は通常減少していますので(増減可能な他の従属パラメータとは異なり)、偏導関数の負数をとるのが一般的です。

formula3

3.4  Rho(ロー)

Rho (ρ) は無リスク利子率、r に関するオプション価格の変動率です。

formula4

3.5  Crho

Carryrho (Crho) はいわゆるキャリーコスト率、b −すなわちポジションを維持あるいは保有するコストの利率の変動に対するオプション価格の感応度です。資産が株式の場合、これは無リスク利子率とq、株式の配当率との差として定義されます。従って、b = r − q になります。

formula5

3.6  Gamma(ガンマ)

  Gamma (Γ) は原資産の価格変動に対するDelta の感応度です。

formula6

3.7  Vanna

Vanna はDeltaが原資産ボラティリティのわずかな変動に対してどれほど感応度が高いか(あるいは同様に、資産価格のわずかな変動に対してどれほどVegaが変動するか)を示しています。

formula7

3.8  Charm

Charm は 時間の変動に対するDelta の感応度(あるいは同様に、資産価格のわずかな変動に対する Theta の感応度)です。

formula8

3.9  Speed(スピード)

Speed は原資産の価格の変動に対するGamma の感応度です。

formula9

3.10  Colour(カラー)

Colour は時間の変動に対する Gamma の感応度(あるいは同様に、資産価格の変動に対する Charm の感応度)です。

formula10

3.11  Zomma

Zomma は原資産のボラティリティの変動に対する Gamma の感応度(あるいは同様に、資産価格の変動に対する Vanna の感応度)です。

formula11

3.12  Vomma

Vomma は原資産のボラティリティの変動に対する Vega の感応度です。

formula12

4  ブラック-ショールズモデル

上記で述べたように、ブラック‐ショールズモデル[3]は広く使用される、資産の動きに関する数学的表現です。その応用は、オプション価格のいわゆるブラック‐ショールズ偏微分方程式をもたらします。その偏微分方程式は資産価格と時間、t のみに依存すると考えられています。

formula13

P についてこれを解くために、最初に境界条件を指定する必要があります。例えば、

formula14

formula15

formula16

これは、ヨーロピアンコールオプションに対応しています(ヨーロピアンプットオプションに対応する境界条件は同様に指定することができます)。X が行使価格である方程式 (16) はコールオプション4の利益の正式な定義であることにご注意ください。 特定の境界条件5では、PDE は拡散方程式に変換が可能です。そして標準の手法で解くことが可能で、ヨーロピアンコールオプションとプットオプションの価格の閉形式をもたらします:

formula17 formula18

ここで

formula19 formula20

そして

formula21

figure1
図1: S = 55, σ = 30%, r = 5%, q = 0 かつ X = 70 のときのブラック-ショールズ式[ 方程式 (17)] で与えられる、コールオプションの権利行使期限に対するオプション価格

これは累積正規分布関数です。図1は従属パラメータの特定値についての方程式 (17) から算出されたPc(T) を示し、ヨーロピアンコールオプションのモデルに従って、オプション価格が権利行使残存期間とともにどのように下がるかを示しています。例えば、オプション締結と行使可能な期日との間隔が小さいほど、オプションの価格は下がります。 図2で表されているように、方程式 (16)で表されたオプション利益6 に加えてPc(S) (固定のTで)を計算するために方程式 (17) も使用します。 図2はやはりヨーロピアンコールオプションで、行使価格が近づくにつれて(S はオプションが締結された時点での原資産の価格であることを思い出してください)オプション価格はゼロから増加することを示しています。S が増加するにつれて、利益に漸近的に近づきます。

figure2
図2: T = 0.5 years、σ = 30%、r = 5%、q = 0 かつ X = 70のときのブラック-ショールズ式[ 方程式 (17)] で与えられる、コールオプションの資産(ここでは株式と仮定)価格に対するオプション価格。また方程式(16)で与えられるオプションの利益も示しています。

図1と図2を併せて見てみると、T がゼロへ減少していることがわかります(つまり.満期日が近づいています)。Pc(S) 曲線は予想通りオプション利益に接近しています。 オプション価格の閉形式解を考えると、グリークスの明示式が簡単に見つかります。例えば、ブラック−ショールズモデルに対応する式(方程式 (17) と (18) を§ 3の式に代入することによって得られる)は表1で示されています。私たちは図3で表されるΘ(T) (図1の曲線の傾きは負数を表す)をプロットするのにこれらを使用しています。またPc(S)の傾きをとることにより図4で描かれているΔ(S)が得られます。

figure3
図3: 図1のパラメータをもつブラック-ショールズ式によって与えられる、コールオプションの権利行使期限に対するTheta

5  NAG ライブラリオプションプライシングルーチン

NAG ライブラリ [18] のチャプター S は数学と物理学の特殊関数の近似に充てられ、これらを計算するためのいくつかのルーチンを含んでいます。最新版のライブラリのこのチャプターは、いくつかの異なるモデル(表2参照)から生じるオプションプライシング関数を含んでいます。§ 4のブラック−ショールズ7 モデルから生成された比較的簡単な式を始めとして、このチャプターは開発者のアプリケーション内から呼び出しが可能な、オプション価格(バニラとエキゾチック両方)を決定するための様々なルーチンを提供しています。 ちなみに利便性によりそれぞれの価格式(一部を除いて)は二つのルーチンで提供されています:ひとつはグリークスを計算するもので、一つはそうでないものです。(例外は、Bjerksund and Stensland、Standard Barrier and Heston といったモデルで、それらのグリークスの推定は現行のライブラリリリースでは利用できません。)

table1
表1: ブラックショールズモデルのグリークスの式。Delta, Theta、Rho、Crho とCharm はコールオプションとプットオプションでは異なります。その他のグリークスの場合、この違いは関係ありません。

NAG ルーチン(ユーザ開発コードとは対照的に)を使用する利点は、以下の通りです。8:あらゆるアルゴリズムの実装は正確性、信頼性、安定性について広範囲に渡ってテストされました。そして様々なプログラミング環境からアクセスすることが可能です。私たちは、NAGオプションプライシングルーチンがどのようにMicrosoft Excel 内から呼び出すことができるか二つの例を示すことによって説明します。私たちは Visual Basic for Applications (VBA)( Excel への機能を追加するための標準環境)とDynamic Link Library (DLL)の形式のNAG Fortran ライブラリ9を使用します;VBA プログラム内からライブラリルーチンを呼び出すことは簡単です。最も簡単なのは、NAG 関数の単なるラッパーである場合です。

figure4
図4: 図2のパラメータをもつブラック−ショールズ式で与えられる、コールオプションの資産価格に対するDelta

5.1  例1

最初の例は、§ 4のブラック−ショールズ式を用いてヨーロピアンプットオプションの価格とグリークスを計算するためにS30ABF ルーチンを呼び出す単純な VBA プログラムです。 図5で表されるコード10 は、Excelワークブックのモジュールシートへの挿入[19] が可能です。これにより関数 NAG_option_price(X,S,T,Sigma,r,q) がワークブックのスプレッドシートから呼び出せるようになります。
コードに関する技術的詳細は役に立つ場合があります。VBAでは、Declare文はDLL関数の定義を含めるのに使用されます;私たちはプログラムの先頭付近でNAG DLL FLDLL224M_nag.dll の中に存在するS30ABFへのインターフェースを定義するためにDeclare文[19] を使用しています。NAG ライブラリの各関数のDeclare文はNAG DLLのディストリビューションに含まれています(またWebサイト [20] にも公開されています)のでそれらをコピー&ペーストしてご利用いただけます。残りのコードは他のパラメータの宣言、NAGルーチンの呼び出し、エラーのチェック(不正な入力値のチェック)やスプレッドシートへ結果を渡すために利用される配列へのデータ転送を行います。
NAG_option_price のパラメータは、X(行使価格)、S (原資産価格)、T (権利行使残存期間)、Sigma (ボラティリティ)、 r(無リスク利子率)及び q(配当利回り)です。 これらの変数の値は、スプレッドシートへ入力することができ、NAG_option_priceはオプション価格とグリークスを含む(図5を参照)配列(output 変数)を返します。図6は、スプレッドシート11から呼び出されるNAG_option_priceを表すスクリーンショットです。
NAG オプションプライシングルーチンは複数のX とTから P を計算するよう設定されています。従って、例えば図5ではS30ABFへの呼び出しの際の3つ目と4つ目のパラメータ(m と n)はそれぞれ行使価格の数と使用される満期の数として定義されます。これらの値は、配列X(m) と T(n)によりルーチンに受け渡されます。一方出力結果は2次元配列 P(m,n)、Delta(m,n)、など12に返されます。

ルーチン説明発祥元
S30AAFブラック-ショールズ-マートンオプションプライシング[3, 15]
S30ABFブラック-ショールズ-マートンオプションプライシング[3, 15]
(グリークスつき)
S30BAFFloating-strike ルックバックオプションプライシング[8]
S30BBFFloating-strike ルックバックオプションプライシング[8]
(グリークスつき)
S30CAFバイナリオプション: キャッシュ-オア-ナッシング オプション[23]
プライシング
S30CBFバイナリオプション: キャッシュ-オア-ナッシング オプション[23]
プライシング(グリークスつき)
S30CCFバイナリオプション: アセット-オア-ナッシング オプション[23]
プライシング
S30CDFバイナリオプション: アセット-オア-ナッシング オプション[23]
プライシング(グリークスつき)
S30FAF標準バリアオプションプライシング[9]
S30JAFJump-diffusion、マートンモデル、オプションプライシング[9, 16]
S30JBFJump-diffusion、マートンモデル、オプションプライシング[9, 16]
(グリークスつき)
S30NAFHeston モデルオプションプライシング [1, 10, 13, 24]
S30QCFアメリカンオプション: Bjerksund and Stensland プライシング[2, 7]
S30SAFアジアンオプション: 幾何連続平均率オプションプライシング[12]
S30SBFアジアンオプション: 幾何連続平均率オプションプライシング[12]
(グリークスつき)
表2: Mark 22 NAG Fortran ライブラリのオプションプライシングルーチン

figure5
図5: ブラック-ショールズ-マートン式を用いたヨーロピアンプットオプションの価格とグリークスの計算のためにS30ABF を呼び出すVBA 関数

figure6
図6: Excel スプレッドシート内からの関数 NAG_option_priceの呼び出し

サンプルプログラムでは、一つの価格と一連のグリークスを計算するだけです。従って、これらの変数は 1 に固定され、P、Delta など12はスカラーとして定義されます。

5.2  例2

2つ目の例(図7を参照)は、ユーザが対話形式でオプションプライシングモデルを選択することができ、またコールオプションとプットオプションのどちらかを選ぶことができ、さらに従属パラメータの値を設定できる、より複雑なVBA プログラムです。 適切なNAG ルーチンを呼び出した後、オプション価格やグリークスが行使価格あるいは権利行使残存期間へ依存していることを視覚化するためにExcelのプロットの機能がワークシート内で使用されます。ユーザは、プロットされたグリークスを選ぶことができ、プロットのx軸を選択しプロットしたいx値の範囲を設定することができます。
図7で表示されるサンプルで選択された価格モデルは、S30CAFルーチンで計算される、いわゆるキャッシュ-オア-ナッシング式 [23]です。このタイプのオプションは、資産価格がコールオプションの行使価格より大きい場合、そしてプットオプションの場合にはその逆になる場合、満期に固定額 Kを払います。従ってコールオプションとプットオプションの価格は、以下になります [25]:

Pc = Ke−rTΦ(d2),(22)
Pp = Ke−rTΦ(−d2).(23)

[cf 方程式 (17) と (18)]。図7の上のプロットと図2とを比較すると異なる種類のオプション間の質的差異がわかります。

5.3  可用性

  複数の行使価格と複数の満期に対応したオプション価格とグリークスを返す拡張版と併せて、例1のプログラムを含むExcel ワークブックは[21]でダウンロードいただくことが可能です。 例2のライブデモ(音声の解説やプログラムの内容についての議論を含む)は[22]でご利用いただけます。例2のワークブックのコピーを希望するユーザの方は弊社salesmailまでお問い合わせください。

6  結論と今後の研究

この資料では、私たちはNAGライブラリを使用したExcelでの金融オプション価格の計算に注目してきました。私たちは、NAGルーチンがExcelワークシート内からアクセス可能となるメカニズムを話題にとりあげ、いくつかの例でこれを説明してきました。
NAGルーチンがMATLAB [6, 26]のような他の環境からどのように呼び出すことが可能かについての調査を含め、この分野の他の領域についてはまだ研究がされていません。また、オプション価格を推定する別の手法がNAGライブラリのルーチンを使用して実装可能です;これらには、モンテカルロシミュレーション[14] や方程式 (13) の数値解法[17]、Hestonモデル[10]などの他のモデルから発生する類似の PDE が含まれます。具体的にいうと、チャプターD03(PDEの数値解法を表す)には、有限差分スキーマを使用してブラック−ショールズPDEを解くライブラリルーチン[4]があります。この実装手法により方程式 (13) への解析解の微分に関連するいくつかの仮定を緩和することができます:−例えば、現在ではパラメータσ、r 及び q は時間とともに変わることができます。 (また、数値解法と解析的表式の計算との間にはパフォーマンスの違いがあります。)

figure7
図7:いくつかのNAGオプションプライシングルーチンを使用するサンプルのExcelワークシート。ユーザは手法を選択することができ、コールオプションかプットオプション(上部左)のどちらかを選ぶことができ、従属パラメータ(上部中央)に対し値を入力することができます。計算結果は右側のグラフ(オプション価格は上、グリークスは下)に表示されます。ユーザはExcelのフォーム制御(下部左)を通じてグラフの様々な特徴を編集すること(プロットされるべきグリークスの選択を含み)ができます。

最後に、完全を期すために、方程式 (13) の解析解を求める D03ルーチン [5]について述べます;オプション価格やグリークスの計算の際に平均瞬時値を使用することにより時間依存パラメータを可能にしようとするという点で、これはS30ABFとは異なります。

謝辞

この資料を作成するにあたり、有益な議論をして下さった、Robert Tong、Mick Pont、Lawrence Mulholland、David Sayers そしてJohn Holden の皆様には 感謝申し上げます。

参考文献
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[26] J. Walton and M. Krzysztofik. Using the NAG Toolbox for MATLAB-
Part 5. In preparation, 2010.

注釈

* Marcin.Krzysztofik@nag.co.uk

Jeremy.Walton@nag.co.uk

1 原資産は財産の一つで先物契約あるいは株式(この資料の記述の中で想定される場合がある)などの別のデリバティブになる場合があります。

2トレーダーが第三者から資産を借りてそれを売り、後日その資産を買い戻して借り手に返すことをショートポジションを建てると言います。ここで期待されているのは、資産の価格が売ってから買い戻すまでの間に下がることで、それによりトレーダーに利益がもたされます。

3トレーダーが後日売るために資産を買うことをロングポジションを建てると言います。ここで期待されているのは、資産の価格が買いと売りの間で上がることで、それによりトレーダーに利益がもたされます。

4 プットオプションの利益はP(S, T) = max(X − S, 0)。

5 さらに、方程式(13)の他のパラメータについてある仮定をします−たとえば、σ、r と q は解析解には必要とされる時間とは無関係です。これについては§ 6で説明します。

6 利益はオプションの本質的価値としても知られています。価格と本質的価値との違い−図2の2つの曲線の距離−はオプションの時間的価値です。

7 歴史的に、これらの式はブラック-ショールズ-マートンと称されています。それはNAGライブラリドキュメントで使用されている表記で、表2に反映されています。

8 これらの利点はおそらく§ 4の式の場合に限界と見なすことができますが、より洗練されたモデルでのオプション価格とグリークスの式はますます複雑になることに注意する必要があります。

9 オプションプライシングルーチンはNAG CライブラリとNAG Library for SMP and Multicoreでもご利用いただけます。

10 コードの入手についての詳細は § 5.3 を参照ください。

11 NAG_option_price は配列値を返しますのでご注意ください。配列を返すVBA関数を呼び出すためには(またこれらの値をスプレッドシートに表示させるためには)、最初に配列が記述されるセルの範囲(この場合は13個のセル)を選択し、式に入力し(ここではNAG_option_price(C4,C5,C6,C7,C8,C9))そしてCTRL SHIFT ENTERを同時に押します。(ENTERキーのみを押すと、配列の最初の要素を最初のセルに入力するだけとなります)

12 これらの配列の第一次元は、変数LDP( S30ABF への呼び出しの際の12番目のパラメータ)によって指定されます。LDP は、m 以上でなくてはなりません。

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