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チューニングレポート<要約>:時間依存密度汎関数法のCASTEPへの組込み

*ここに掲載するのは、STFC Rutherford Appleton LaboratoryのDominik B. Jochym博士によるHECToRレポート「Hybrid Time-Dependent Density Functional, Theory in CASTEP: a dCSE Project, Dominik B. Jochym, STFC Rutherford Appleton Laboratory, July 8, 2010」を要約したものです。

[2017年2月掲載]



概要

時間依存密度汎関数法(TDDFT)は、分子系における励起状態のモデル化において確立された技術として知られ、複数の量子化学コードで実装されています。CASTEP [2]へのTDDFT実装が出来れば、英国の電子構造コミュニティにおいて、無機および有機光起電材料、表面の触媒反応、光学ディスプレイのための発光ポリマー材料、フェムト秒レーザー化学などの分野における最先端の科学的問題に対応することが可能になるでしょう。ハイブリッド汎関数の使用を含めれば、これまでTDDFTの適用拡張を妨げていた幾つかの制約に対処することが可能です[3,1,7]。

TDDFT実装テストベッド

目標は、既存のCASTEPのDFTモジュールへ直接組み込むことで、様々な周波数の外部電場への電子応答計算を可能にすることです。これを後述のより洗練された計算のリファレンスとします。
ここでは特定の周波数での電場に対する一次応答を記述するHutterの論文[6]を参照することとします。また、Tamm-Dancoff近似を適用します。
2番目のモジュールでは、応答計算の2つの異なる手法があります。それは変分法ソルバー、グリーン関数ソルバーです。変分ソルバーは、第一励起エネルギーに近づくとグリーン関数ソルバーよりも安定しています。しかし、分極率が負であろうとなかろうと、変分ソルバは第一励起エネルギーよりも上の周波数に対して収束することはできません。

ここで、孤立したメタン分子をテストしました。励起状態エネルギーを得るために、複数の周波数で分極率を計算して発散を外挿しました。LDAを用いた場合に第一励起エネルギーが9.10eVであることを見出しました。これはGAUSSIAN98を使用した文献値9.053eV[8]と比較できる値です。

Hutterソルバーの構築

Hutterの方法を使用して、TDDFTのリリース可能な実装の枠組みの多くを構成します。
Hutterは平面波基底関数で効率的に実装可能なように、TDHF法を再定式化しました。これは非エルミートハミルトニアンを用いて、直接励起エネルギーを計算するものです。Tamm-Dancoff近似では、B行列はゼロとされてエルミート型行列(行列A)の固有値問題に帰着します。これが実装するHutterソルバーです。
CASTEPには4次元配列が存在し、その次元は、Gベクトル(平面波)、k点、バンドおよびスピンです。最低の励起状態の数個に興味があるため、全行列の保存と対角化は不要です。その代わりに繰り返し法を用います。

ここでは外部の繰り返し法固有値ソルバーを用います。ここでは、外部ライブラリとしてARPACK3(http://www.caam.rice.edu/software/ARPACK/)およびEA19(HSL (formerly the Harwell Subroutine Library)4、http://www.hsl.rl.ac.uk)を用います。ARPACKはFortran77で記述されており、Arnoldi法が実装されています。HSL-EA19はF95+TR-15581標準で記述され、Jacobi-conjugate preconditioned gradient法が実装されています。

· 結果

メタンの第一励起エネルギーを計算したところ、9.08eVでした。

HECToR上での並列分散ソルバー

ここでの目標は、HECToRへの移植と大規模ベンチマークです。移植では、ARPACKとHSL-EA19の代わりに、状態別共役勾配法とブロックDavidsonソルバーを専用の並列ライブラリとして実装しました。

Hutterの定式化には、特殊なk点Γを用いることが仮定されています。この意味は、波動関数の実空間表現が常に実数であることです。CASTEPは常にΓ点での最適化を行います。一つのみのk点を用いることで、Gベクトルとバンドの並列手法は制約を受けます。このTDDFTコードはバージョン4.4をベースにしており、バンド並列ではありません。

· 並列ベンチマーク

H2分子のシリアル実行ではDavidsonソルバーが最も効率的でした。並列ベンチマークには、バックミンスターフラーレンCを用いました。HECToR(フェーズ2a)上の16コアを用いてDavidsonソルバーの繰り返し回数を5回にして測定しました。また、NAGが開発した共有メモリー拡張コードのプロトタイプを用いました。4-way SMPの256PEの場合、並列効率は約80%でした。

ハイブリッドTDDFT

ハイブリッド汎関数を用いた場合の励起エネルギーの寄与は、CASTEPのnlxcモジュールでの定式化に非常に似ています。応答関数を含むマイナーな修正を行いました。それでも、Hartree-Fock交換を含む計算は基底状態の計算よりも高価です。このコストはバンドの2重ループによるものです。こうした計算は、バンドによる並列分散から大きな利益を得ることが出来ます。 Hartree-Fock応答の実装はDFPTにも適用する事が可能です。

ここで、ハイブリッド汎関数PBE0に対する応答カーネルを実装し、いわゆる「擬似」励起状態を持つシステムに対してのみ生じるように見える数値的不安定性に遭遇したまし[5]。この問題は負の固有値が生成される場合に現れます。この不安定性は、応答密度が非常に小さいがゼロでない場合に、微妙な相互作用またはHartree-Fock応答およびPBE交換相関応答から生じるように見えます。この問題は、CASTEPの細かいグリッド(fine_grid_scale = 4.0まで)の粒度を増やすことによって回避され、GGA応答項の数値微分の質が改善されます。

文献

[1] L. Bernasconi, M. Sprik, and J. Hutter, Hartree-Fock exchange in time dependent density functional theory: application to charge transfer excitations in solvated molecular systems, Chemical Physics Letters 394 (2004), no. 1-3, 141-146.
[2] S.J. Clark, MD Segall, CJ Pickard, PJ Hasnip, MJ Probert, K. Refson, and MC Payne, First principles methods using CASTEP, Z. Kristallogr, 220 (2005), no. 5-6, 567-570.
[3] A. Dreuw, J.L.Weisman, and M. Head-Gordon, Long-range charge-transfer excited states in time-dependent density functional theory require non-local exchange, The Journal of Chemical Physics 119 (2003), 2943.
[4] A.L. Fetter and J.D. Walecka, Quantum Theory of Many-Particle Systems, McGraw-Hill, New York, 1971.
[5] A. Heßelmann and A. Görling, Blindness of the Exact Density Response Function to Certain Types of Electronic Excitations: Implications for Time-Dependent Density-Functional Theory, Physical review letters 102 (2009), no. 23, 233003.
[6] J. Hutter, Excited state nuclear forces from the Tamm-Danco approximation to time-dependent density functional theory within the plane wave basis set framework, The Journal of Chemical Physics 118 (2003), 3928.
[7] A.F. Izmaylov and G.E. Scuseria, Why are time-dependent density functional theory excitations in solids equal to band structure energy gaps for semilocal functionals, and how does nonlocal Hartree-Fock-type exchange introduce excitonic effects?, The Journal of chemical physics 129 (2008), 034101.
[8] A.R. Porter, O.K. Al-Mushadani, M.D. Towler, and R.J. Needs, Electronic excited state wave functions for quantum Monte Carlo: Application to silane and methane, The Journal of Chemical Physics 114 (2001), 7795.
[9] ] K. Refson, P.R. Tulip, and S.J. Clark, Variational density-functional perturbation theory for dielectrics and lattice dynamics, Physical Review B 73 (2006), no. 15, 155114.
[10] S. Tretiak, C.M. Isborn, A.M.N. Niklasson, and M. Challacombe, Representation independent algorithms for molecular response calculations in time-dependent self-consistent _eld theories, The Journal of chemical physics 130 (2009), 054111.

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